検索する

ICT教育とは?その必要性とメリット・デメリットを徹底解説

2024年10月18日
ICT教育とは?その必要性とメリット・デメリットを徹底解説のサムネイル画像
三澤結
大学卒業後、千葉県内の公立高校で英語教員を8年間務める。
子供たちに実践的な英語力を身に付けてもらうために、授業に英語劇やグループワークなどのアクティブラーニングを積極的に取り入れた経験を持つ。
現在はフリーランスのSEOライターとして、これまでの経験を活かして教育や英語学習、留学などのジャンルの記事を執筆している。
中学校教諭一種免許状(英語)・高等学校教諭一種免許状(英語)・IELTS Overall 7.0・TOEIC820点・実用英語技能検定準1級を保有している。

ICT教育とは、デジタル機器やITテクノロジーを教育現場に導入し、さらに学習効果を高めることを目指した教育のことです。

近年、教育活動の効率化や、授業の幅が広がるなどのメリットがあることから、注目度が高まっています。

 そこで本記事では、ICT教育の定義と必要性、メリットとデメリットについて詳しく解説します。

 

ICT教育とは


 ICT教育とは、下記のようなITテクノロジーを使って教育効果を高めるための教育手法のことを指します。

 

l  コンピューター

l  タブレット端末

l  電子黒板

l  デジタル教科書

l  プロジェクター

 

2018年にOECD(経済協力開発機構)が発表した「OECD生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)のポイント」によると、日本は学校の授業(国語、数学、理科)におけるデジタル機器の利用時間が短いことが分かりました。

80%の生徒が「利用しない」と回答しており、この結果は37カ国*OECD加盟国の中で最下位です。*2018年時点

このような状況を打破するために、政府はICT教育の普及を急ピッチで進めることとなったのです。

 下記の表は、学校における主なICT環境の整備状況をまとめたものです。

 

項目

令和2

令和3

教育コンピューター1台当たりの生徒児童数

4.9

1.4

普通教室の無線LAN整備率

48.9%

78.2%

インターネット接続率(100Mbps以上)

79.2%

88.0%

普通教室の大型提示装置整備率

60.0%

70.3%

指導者用・学習者用デジタル教科書整備率

56.7%

67.3%

※文部科学省「令和2年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)を元に筆者が作成

 

令和2年から令和3年にかけて、全国中の学校で急速にICT環境が整備されてきたことが分かります。

 

ICTITの違いは?

ICTとは、”Information and Communication Technology”の略語で「情報通信技術」という意味を持ちます。

ただし、情報通信技術そのものだけでなく、インターネットを活用した産業やサービス、コミュニケーションなどを指すことも多いです。

 

それに対し、ITは“Information Technology”の略語で、情報技術そのものです。ITとして、アプリケーションやOA機器、インターネット環境などが挙げられます。

 

ICTとの違いは「コミュニケーション」が含まれているかどうかです。

 

2000年頃にはITという言葉が主に使われていましたが、現在はネットワークを使った知識や情報のやり取り、人同士のつながりに重点を置かれていることから、ITよりもICTの方がよく使われています。

 

ICT教育のメリット

ICT教育には、下記のようにさまざまなメリットがあります。

 

l  教育活動が効率化される

l  授業の幅が広がる

l  生徒一人ひとりに合った学習ができる

l  生徒の学習へのモチベーションが高まる

l  教員の負担が軽減される

 

本章では、それぞれのメリットについて詳しく説明します。

これらのメリットを知ることで、ICT教育についてより具体的にイメージできるようになるでしょう。

 

教育活動が効率化される

ICT教育を実践することで、生徒や保護者に教材・情報の共有がスムーズかつ容易に行えるため、教育活動が効率化されます。

例えば、電子黒板やタブレットを使用すると、教員が板書して生徒がノートに書き写すという手間と時間が節約されます。

その節約された時間は、生徒が自分なりに分かりやすくノートをまとめる時間にしたり、グループワークを通じて学習内容の理解を深める時間にしたりと、有効活用することが可能です。

このようにICT教育を通じて授業が効率化されることで、学習環境が向上し、教師と生徒にとって共に効果的な教育活動を実現できます。

 

授業の幅が広がる

ICT教育の導入は、授業の幅を広げることにもつながります。

なぜならば、ICT教育なら従来の教科書や紙媒体では難しかった資料やツールを使い、より豊かな学びを提供することができるためです。

例えば、算数や数学の図形、理科の放物線の移動といった頭の中では想像しにくいものであっても、ICTを活用すれば目の前に再現できます。

また、オンライン上で他の学校や国の人と交流することも可能です。

ICT教育を使えば、教材や学習体験の選択肢が増え、豊かで多彩な授業を提供できるのです。

 

>> 全国の学校におけるICT活用の事例についてさらに詳しく知りたい方はこちらへ

 

生徒一人ひとりに合った学習ができる

ICT教育を通じ、生徒一人ひとりに合った学習ができるようになります。

それはICTを活用することにより、生徒の学習進捗度や理解度に合わせ、個別で教材や課題を選定・提供することができるためです。

例えば、学習管理システム(LMS)を使えば、各生徒の学習進捗状況をリアルタイムで把握し、それぞれの生徒が苦手としている分野に焦点を当てた補習教材を提供できます。

また、スタディサプリなどの教育アプリを使うことで、生徒は自分のペースで学習を進めることも可能です。

ICT教育は、生徒一人ひとりの学習ニーズに柔軟に対応した授業を実現させます。

 

生徒の学習へのモチベーションが高まる

ICT教育を導入することで、生徒の学習へのモチベーションが高まるでしょう。

ICT教育では、視覚的かつインタラクティブな教材が使えるようになるため、生徒たちは楽しく主体的に学習に取り組めるようになるのです。

例えば、授業に教育アプリを取り入れた場合、ゲーミフィケーション(先月私が執筆した「ゲーミフィケーション」に関する記事に内部リンクを貼り付けてください。)によってポイントやバッジなどの報酬を獲得できるため、達成感を得ながら学習できます。

また、VRARなどの技術では、仮想空間をリアルに疑似体験しながら学べるため、おのずと学ぼうとするでしょう。

このように、ICT教育は生徒たちの興味関心を引き出し、学習意欲を高めるために役立つのです。

 

教員の負担が軽減される

ICT教育が普及することで、授業準備や成績管理、資料配布などの作業が効率化されるため、教員の負担が軽減されます。

例えば、デジタル教材を利用すれば、従来の紙媒体の教材を準備する必要がなくなり、時間と手間が節約されます。

他にも、オンラインプラットフォームによって宿題の提出や成績の管理が自動化されるため、個別対応する時間も減らせるでしょう。

 

ここで、下記の図をご覧ください。


出典:総務省「教育分野におけるICT化の効果

 

この図は、総務省の教育機関におけるICT化と効果の関係を示しています。

ICT教育の導入が「教員の労働時間の短縮」「教員の授業以外の業務軽減」につながったと回答する教員は少なくありません。

これらの結果から、ICT教育の導入によって教員の負担が軽減され、教育活動に集中できる環境が整えられることに期待できます。

 

ICT教育の課題やデメリット


 

ICT教育には、下記のような課題やデメリットもあります。

 

l  端末の購入にお金がかかる

l  機器の管理と故障の対応が求められる

l  教員に継続的な研修やサポートが必要になる

 

ICT教育のメリットのみならず、デメリットや課題についても知っておくことで、実際にICT教育を行った際に「こんなはずではなかった」と後悔するリスクを軽減できるでしょう。

 

端末の購入にお金がかかる

ICTを導入するデメリットとして、端末の購入にお金がかかってしまう点が挙げられます。

例えば、タブレット端末を購入する場合には、端末の費用に加えてソフトウェアのライセンスやメンテナンスの費用も必要です。

家庭においても、インターネット環境の整備や故障時の修理代など、コストが発生する可能性があります。

このようにICT教育を普及させるためには、端末の購入をはじめとする多くの費用が必要です。

 

機器の管理と故障時の対応が求められる

ICT教育には、機器の管理や故障時の対応が求められます。

ICT機器は精密なため、定期的なメンテナンスや不具合への迅速な対応が不可欠です。

例えば、パソコン・タブレットにはソフトウェアの更新やウィルス対策をしなくてはなりません。

この対策を怠ってしまうと、セキュリティリスクや機器の動作不良が生じてしまいます。

したがって、ICT教育を導入する際には、機器の管理や故障対応の負担がかかることを念頭に入れておきましょう。

 

教員に継続的な研修やサポートが必要になる

ICT教育を導入した場合、教員に対して継続的な研修やサポートを行う必要がます。

ICT技術やツールの進化するスピードは目覚ましく、教員が最新の技術を効果的に活用するためには、常に知識をアップデートすることが不可欠であるためです。

また、現時点でICT機器を使うことに抵抗感を持つ教員も少なくありません。

下記のデータは、ICT導入を段階別に見た「義務教育段階における課題について」自治体にアンケートを取った際の結果をまとめたものです。

 


出典:文部科学省「学校教育情報化の現状について

 

アンケート結果から、教員のICT活用指導力に対して課題を抱える自治体が多いことが伺えます。

ICT導入に伴い、定期的な研修やサポートによって教員の負担が増え、かえって教育以外の業務に時間を取られる可能性もあるのです。

 

まとめ


ICT教育とは、デジタル機器やITテクノロジーを教育現場に導入し、さらに学習効果を高めることを目指した教育のことです。

本記事でも紹介したように、ICT教育には教員と生徒双方にとってメリットがあります。

ICT教育は、国を挙げて取り組んでいる政策であり、まだまだ始まったばかりです。

今後ICT教育が教育現場にもたらす変化や影響について、これからも引き続き注目していきましょう。