今注目されている非認知能力とは?育むポイントと注意点を解説

現在、世界的に注目を浴びている「非認知能力」について、詳しく知らない方もいるのではないでしょうか。この概念は、ノーベル経済学賞受賞者のジェームズ・ヘックマン教授らの研究によって注目されるようになりました。
幼児期に身に付けておきたい力ともいわれているため、どのように育めばいいのか悩むこともあるでしょう。
非認知能力は、学校のテストで数値化できるものではなく、個人の性格や心といった目に見えない部分の能力です。学力向上にも関わる力のため、脳の発達段階である幼児期から学童期にかけての取り組みが重要です。
本記事では、非認知能力について詳しく解説するとともに、育むときのポイントを紹介します。非認知能力の育て方を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
非認知能力とは
非認知能力は、テストやIQのように数値化できない、内面的なスキルや人間力を指す概念として使用されている言葉です。
具体的には「目標を決めて取り組む」や「周囲と円滑にコミュニケーションをとる」などが挙げられ、学力だけでは補えない生きる力を育むために必要です。
非認知能力は人生を豊かにする上で重要な能力であり、子供の成長や人間形成に大きく関わります。
認知能力との違い
認知能力は、主に知識や論理的思考といった知的能力を指します。学校や塾などのテストで数値化できるもので、近年ではデジタル教材も使用しながら、認知能力を高める機会が増えています。
一方、非認知能力は感情や意欲など、社会的スキルに関わる能力です。数字で表せない思いや考えなど内面的なもので、心身ともに豊かな人生を送るために欠かせません。
特に、子供には学力やIQの向上だけではなく、非認知能力の育成を取り入れたバランスのよい教育が必要とされます。
非認知能力の種類
非認知能力は研究者によって、さまざまな方法で分類されています。一般的には下表のように分けられます。
自分に関する力 |
人と関わる力 |
・自己認識 ・意欲 ・忍耐力 ・セルフコントロール ・メタ認知 |
・社会的能力 ・対応力 ・クリエイティビティ |
自分に関する力は、自分を高めたり自分と向き合ったりする力ともいわれ、子供の発達において重要です。最後までやり抜く力や粘り強さ、客観的な判断力などが挙げられます。
人と関わる力は、他者とつながる力です。共感性や協調性、思いやりや失敗から学ぶ力など社会性と呼ばれるスキルです。幼児期に育むことで社会への対応力につながり、幸せな人生を送れるといわれています。
教育で非認知能力が注目される理由
非認知能力が世界的に注目されるきっかけとなったのは、ノーベル経済学賞受賞者のジェームズ・ヘックマン教授による研究「ペリー就学前プロジェクト」です。ジェームズ・ヘックマンは、幼児期の質の高い教育プログラムが、後の人生における収入や社会適応に長期的な効果をもたらすことを実証しました。
参考:内閣官房
非認知能力は学力だけではなく、子供の幸福感や自己肯定感といった「ウェルビーイング」の向上にも必要です。ウェルビーイングが高まると学習意欲が向上し、AI時代を生きる上で不可欠となる柔軟な思考力やコミュニケーションスキルを育めます。
例えば、協調性や自己制御力を高める教育は、将来的にチームでの仕事や問題解決力といった社会人として必要な能力にも直結します。
特に、AIや技術の進展により、単なる知識だけでなく柔軟な思考や対人スキルは今や必須です。これからの時代を生き抜くためにも、子供のうちから非認知能力を育成する必要があります。
幼児期に非認知能力を育むポイント
ここからは、幼児期に非認知能力を育むポイントを5つ紹介します。
日々の遊びの中で楽しみながら取り組めるものばかりのため、参考にしながら実践してみてください。
考える力を意識する遊びを取り入れる
子供は、遊びを通じてやり抜く力や創造力などを自然に育成できます。
自分で考えて行動できるブロック遊びやごっこ遊びを積極的に取り入れましょう。
試行錯誤しながら形を作るブロック遊びは「どうすればできるのか」と、自ら問いを立てて遊べるため論理的思考が養われます。また、ごっこ遊びはストーリーやルールを考える必要があり、創造力の向上につながります。
自由な遊びは知的好奇心を引き出し、非認知能力の土台づくりに有効です。
大人が非認知能力を伸ばすことを意識しすぎない
非認知能力は無理に「伸ばそう」とせず、自然な関わりや遊びの中で育つものと考えることが大切です。過度に期待したり声かけをしすぎたりすると、子供の自由を妨げてしまいます。
大人が思うような遊びを強制しては、子供が受け身になり、想像力や発想力が伸びにくくなる可能性があります。
子供の自主性や興味関心を尊重し、過干渉にならないよう注意しましょう。非認知能力を意識するあまり声をかけたくなるかもしれませんが、見守ることも大人の役割の一つです。
子供がやりたいことはできるだけ制止しない
「危ない」「時間がない」など大人の理由で制止せずに、子供の「やりたい」を大切にしましょう。
子供が自分の意思でチャレンジすることは、主体性や粘り強さにつながります。安全が確保できていれば、できるだけ制止せずに見守ってあげましょう。
失敗も経験の一つです。制限しすぎず自由に挑戦させ、成長の機会を奪わないようにする必要があります。
周囲と楽しい時間を共有する
非認知能力は家族や友達と一緒に遊ぶことで、自然と育まれます。
子供は他者とのやりとりをとおして、協調性やコミュニケーション能力などを高めていきます。兄弟や友達、家族と遊ぶ中で楽しい経験を積み重ねていくことが重要です。
良好な人間関係を築くことは、心の安定にもつながります。幼児期には、さまざまな人と関わる楽しさを知ってもらい、共感力や思いやりを自然と体験できるようにしましょう。
結果に至るまでの努力を褒める
子供が何かを成し遂げたときには、結果だけでなく過程を具体的に褒めてあげましょう。できた・できなかったという結果だけを評価してしまうと、子供は失敗を恐れるようになる可能性があります。
例えば、積み木で何かを作り上げたときには「高く積めるように考えられたね」「集中してできたね」など、努力を認めるような声かけをすると、挑戦する姿勢を育めます。
うまくいかなかった場合でも、自信をなくさず前向きに進む力を育むために、結果に至るまでのがんばりを褒めてあげることが大切です。
非認知能力を伸ばすために注意したいこと
子供の非認知能力を伸ばすためには、大人の関わり方に注意が必要です。過干渉にならず、自然な成長を促すように心がけましょう。
子供が失敗したときに怒鳴らない
子供が失敗したときには責めたり怒鳴ったりせず、経験の一つとして受け止めてあげましょう。
間違ったことや失敗を叱責すると、挑戦することを避けてしまうようになります。大人はどうしたらよかったのか、子供と改善策を考え、一緒に学びを深めていく必要があります。
失敗しても大丈夫、怖くないという環境づくりが、非認知能力を育てる上で重要です。
大人が先回りしない
大人は子供のしたいことを先回りして手出しするのではなく、考える力を身に付けられるように見守ることが大切です。
困難を乗り越える経験は、問題解決能力や粘り強さにつながります。
子供にとって少しハードルが高いものでも先に手を差し伸べず、自分で問題に立ち向かうことができれば、できたときに達成感を味わえます。
大人のやさしさで子供のしたいことを先回りするのではなく、時にはそっと見守ることが、非認知能力を育むために必要です。
周りと比較しない
子供の成長スピードは一人ひとり異なります。周りと比較しては、子供のやる気が喪失するほか、自己肯定感の低下につながります。さらに、周りを意識しすぎると結果ばかりを気にするようになり、新しいことに挑戦する意欲がなくなってしまうでしょう。
他人と比べて、できないことばかりに目を向けるのではなく、子供の成長を認める声かけで自信を育てると非認知能力を高められます。
まとめ
非認知能力は学力やテストなどで数値化されない能力です。子供の将来や人生を豊かにするために必要な力のため、世界的に注目されています。
多様性が求められる現代社会において、自己肯定感を高めたり人と協働したりすることは未来を生きる子供たちにとって重要です。遊びを通して自分で考える力を身に付けられるよう、大人は子供の興味や関心を持てる環境を整え、おおらかな心で見守ってあげましょう。