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暗号資産の税金シリーズ 第3回 暗号資産の確定申告と法人による節税

2024年09月20日
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柴田 洋 氏
国際公認会計士
監査法人トーマツへ入社後、デトロイト・トゥシュ会計事務所 ボストンOFFICEとデトロイトOFFICEでの勤務を経て、柴田公認会計士事業所を開設し、所長就任。
現在は、柴田国際公認会計士事務所 所長、株式会社ベンチャーコンサルティング 代表取締役を務め、活躍中。

前回ご説明したように暗号資産の売却や、別の暗号資産と交換した場合には損益を計算して 確定申告の準備をします。利益(所得)が20万円を超えると確定申告が必要になります。前回の第2回では、個人の場合の税金計算の流れを説明しました。

今回は、個人の確定申告の節税に関して説明します。節税策はいくつかありますので、順に説明します。

確定申告でメリットを受ける

(1)  確定申告の節税で、一番重要なことは、帳簿を保存することです。帳簿の保存が無いと雑所得

になりますが、帳簿の保存があれば事業所得になります。事業所得になれば、事業経費として計上できる経費の幅が広がります。

 

(2)  次に重要な節税策は、青色申告の届け出を行うことです。

青色申告の届け出を行わないと、白色申告となります。白色だと、事業所得で損失が出ても翌年に損失を繰り越せません。一方、青色申告なら損失は3年間繰り越せます。つまり、青色申告なら損失が出た場合に、翌年以降に繰り越して利益(所得)と相殺できます。

青色申告の届け出は、営業開始から2か月以内に届け出が必要です。

 

(3)  専従者給与のメリットを受けましょう。青色申告と同時に、「青色専従者の届け出」を行えば、

配偶者や子弟に払う給与を経費にできます。届け出が無いと経費にできません。給与の額も決める必要があります。届け出の給与は、あくまで目安なので書いた額を払う必要はありません。

家族や従業員に給与を払う際に、毎月 源泉徴収が必要です。従って、「給与支払事業所の開設届」が必要です。また、専従者を含めた従業員数が10人未満なら、「源泉所得税の納期の特例承認」を提出しましょう。源泉税を税務署に収めるのは年2回(1月と7月)で済みます。

 

(4)  青色控除のメリットを多く受けましょう。単式簿記だと青色控除は10万円ですが、複式簿

記だと青色控除は55万円になります。青色控除とは、経費として別枠でもらえる特典です。複式簿記で55万円の控除をもらうには、確定申告の際、損益計算書と貸借対照表を提出する必要があります。複式簿記で作った書類をE-TAXで提出すれば、青色控除は65万円になります。

 

(5)  暗号資産には、消費税は課税されません。つまり、暗号資産の売買からは、消費税は生じま

せん。一方で、通信費や備品などの事業経費には消費税が課税されます。事業規模が大きくなって来た場合は、課税業者の届け出を行い、事業経費に係った消費税10%の還付を受けることも検討しましょう。

例えば、事業用として事務所の購入、自宅の改築(事業部分の建て増し)を行う際に消費税10%がかかります。この消費税を還付してもらうためには、課税業者になる必要があります。

課税業者になるためには「消費税課税事業者選択届」の提出が必要です。提出は、課税業者になる申告年度の前年の12月末までに提出する必要があります。初めて事業を開始する人は、事業開始届と同時に提出が必要です。

ただし、個人事業主で「暗号資産以外の商売」によって「課税売上」がある人は、消費税に関して「免税」が有利な場合もありますので、総合的な判断が必要です。

法人設立で、さらにメリットを受ける 

(6)会社を設立して節税を図りましょう。

個人事業主の場合は、所得税が課税されます。所得税は、累進課税です。4000万円以上の所得になると最高税率は45%です。住民税は別に10%かかります。合計で55%ですから、負担が重くなります。

一方で、会社の場合は法人税が約23%、地方税が約5% 合計で約28%です。法人の場合は、累進課税は無いです。従って、個人の場合は、所得(利益)が900万円を超えると所得税33%、住民税10% 合計43%になるため、法人成りの検討が必要になります。

 

(7)会社を作った場合のメリット(その1)

会社の場合は、経費になる幅が広がります。個人の場合は、交際費の幅が狭いです。例えば、個人の場合、ゴルフのプレー代を経費として認めない調査官がいますが、会社の場合は事業関連であれば交際費として経費処理できます。

 

(8)会社を作った場合のメリット(その2)

会社の場合は、退職する社長・役員(親族を含む)に支給する「退職慰労金」を経費にできる節税メリットがあります。個人事業主の場合は、退職金の制度を使えません。(個人事業主は、小規模共済による手当のみです。)

会社の場合、社長の退職慰労金は、最終給与×勤続年数×功績倍率3で計算します。

例えば、最終給与100万円、勤続年数20年なら、100万円×20年×3/年=6000万円が退職慰労金として会社の経費になります。

退職慰労金を貰う社長や役員にも以下(9)の節税メリットがあります。

 

(9)会社を作った場合のメリット(その3)

会社の場合は、退職する役員・従業員は、「退職金の節税メリット」を使えます。会社の役員・従業員は、勤続年数×40万円を退職金から控除できます。(勤続年数が20年を超える場合は超えた年数×30万円を追加で控除できます。)さらに、控除した残額の50%が課税対象です。

例えば、従業員が勤続20年で退職金1000万円を支給された場合は、1000万円―20年×40万円/年=200万円の50%つまり、100万円が課税対象です。

課税される退職所得100万円は、給与と合算して所得税を計算します。

当然、退職金1000万円は、支給する側の会社の経費に参入できます。