情報モラル教育とは?教育の内容とおすすめ教材もご紹介
ネットを使ったいじめや犯罪のニュースを聞くと、子どもが巻き込まれないか不安に思うものです。学校ではどのような教育が行われているか気になる方も多いでしょう。
本記事では、学校で行われている「情報モラル教育」について詳しく解説します。お子さんと見られる教材もご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
情報モラル教育とは
ここでは、情報モラル教育とは何なのか、また、情報モラル教育が重視される背景について解説します。
情報モラル教育とは
学習指導要領では、「情報モラル」のことを「情報社会で適正な活動を行うための基になる考え方と態度」と定めています。したがって「情報モラル教育」とは、「情報社会で正しく安全に生活するための考え方と方法を教える教育」と言えるでしょう。
また、情報モラル教育は特定の科目で学ぶものではなく、全ての教科で行われます。
情報モラル教育の目的と重要性
情報モラル教育の目的は、情報社会の中で安全に正しく生きていく力を、子どもたちに身につけてもらうことです。この教育は、急速に進化し変容してく情報社会において、大変重要であり急務であると言えます。
情報社会の進展は、子どものスマートフォンの所持率の増加に表れています。NTTドコモの「モバイル社会研究所」が2023年に実施した調査によると、学年別のスマートフォンの所持率は以下のとおりでした。
・小学1~3年:18%
・小学4~6年:42%
・中学1~3年:79%
特に小学校高学年において、所持率が初めて4割を超えました。
また、情報モラル教育の重要性の背景には、ネット上のいじめや犯罪、個人情報の流出などの問題があります。文部科学省の統計データによると、令和4年度、いじめの認知件数のうち、ネットを使ったものは23,920件。総認知件数に占める割合は3.5%でした。問題なのは、学年が上がるにつれてSNSを利用したいじめの認知件数の割合が増えてくることです。
このように、ネットの普及は著しく、それに伴い問題が増加しているのも確かです。インターネットのリスクに対して無防備な子どもたちは、トラブルに巻き込まれることも多く、適切な情報モラル教育が必要不可欠なのです。
情報モラル教育の内容と取り組み
ここでは、情報モラル教育の内容を解説し、役立つ教材をご紹介します。
情報モラル教育の5つの柱
文部科学省では、情報モラル教育の内容として、5つの柱を定めています。ここでは、文部科学省の発行する「情報モラル教育実践ガイダンス」に基づき、5つの柱について解説します。それぞれの柱が密接に結びついていることと、発達段階に応じた指導がなされていることがポイントです。
1. 情報社会の倫理
「情報社会の倫理」の目標は、「情報に関する自他の権利を尊重して責任ある行動をとる態度」を身につけることです。
小学校では、人の作ったものを大切にすること、他人や社会への影響を考えて行動することの大切さを学びます。中学・高校になると、人格権や肖像権、著作権について学びます。
2. 法の理解と遵守
「法の理解と遵守」では、「情報社会におけるルールとマナー、法律があることを理解し、それらを守ろうとする態度」を身につけます。
小学校では、情報をやり取りするときのマナーを理解し守れるように指導し、中学・高校では、情報に関する法律や契約について教えます。
3. 安全への知恵
「安全への知恵」で学ぶのは「情報社会の危険から身を守り、危険を予測し、被害を予防する知識や態度」です。
小学校では、危険なものには近づかないことや、もし危ない情報を目にしたら大人に相談することを学びます。知らない人に連絡先を教えないことや、自他の情報を他人にもらさないことも指導項目です。中学・高校になると、情報社会の特質を理解したうえで安全に行動するよう指導します。
この柱では、健康のためにネットの利用時間を決めて守ることも学びます。
4. 情報セキュリティ
「情報セキュリティ」では、「生活の中で必要となる情報セキュリティの基本的な考え方、情報セキュリティを確保するための対策・対応についての知識」を身につけます。
小学校では、IDやパスワードの保護や不正使用・不正アクセスの防止などを学び、中学・高校になると、情報セキュリティ対策の立て方を習得します。
5. 公的なネットワーク社会の構築
この柱では、「情報社会の一員として公共的な意識をもち、適切な判断や行動をとる態度」を身につけます。
小学校では、協力してネットワークを使い、データやリソースを共有することの大切さを学び、中学・高校では、ネットワークをより良いものにするために主体的に行動する態度を身につけます。
5つの柱の目的と関係性
これら5つの柱は、「心を磨く領域」と「知恵を磨く領域」に分けられます。「心を磨く領域」では、情報社会における正しい判断力・行動力や、相手を思いやる心、ネットワークをよりよくしようとする公共心を育てることが目的です。
一方、「知識を磨く領域」では、情報社会で安全に生活するために必要な知識や技能を身につけます。加えて、ネットが健康に及ぼす影響についても考えます。
これら健全な心と正しい知識を土台として、公共的なネットワーク社会へ積極的に参画する態度を身につけていきます。5つの柱の関係性は下の図をご覧ください。
参考資料:情報モラル教育の手引き(文部科学省)https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/056/shiryo/attach/1249674.htm
また、これら5つの学習内容は、発達段階に応じて展開されていきます。例えば、「情報社会の倫理」の項目を見てみると、下の図のように指導されます。
参考資料:情報モラル教育の手引き(文部科学省)
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/056/shiryo/attach/1249674.htm
まず小学校で、人の作ったものを大切にする心から、自分や他人の情報を大切にする心を育てます。そして中学校に上がると、小学校で培った「ものを大切にする心」を、個人の権利にも適用できるよう発展させていくのです。まさに「心を磨く領域」であることがわかります。
情報モラル教育に役立つ教材
ここでは、文部科学省が提供している教材からテレビ番組まで、情報モラル教育に役立つ教材をご紹介します。保護者向けの動画もあるのでぜひご活用ください。
l スマホ・リアル・ストーリー
https://www.nhk.or.jp/school/sougou/sumaho/
l ネット社会の歩き方
http://www2.japet.or.jp/net-walk/
情報モラル教育の今後とデジタルシティズンシップ
近年、情報モラルと併せて「デジタルシティズンシップ」が注目を集めています。デジタルシティズンシップとは、デジタル技術の利用を通じて社会に積極的に関与し、参加する能力のことです。
デジタルシティズンシップが注目される背景には、情報モラル教育によって、情報社会のリスクだけが強調され、積極的な参画が抑制されている現状があります。デジタルシティズンシップによって、情報社会のポジティブな面により焦点を合わせやすくなるでしょう。
今後、情報社会を生き抜く子どもを育てるためには、情報モラル教育とデジタルシティズンシップをバランス良く取り入れることが課題になります。
まとめ
情報モラル教育は、情報社会で楽しく安全に生活するために欠かせない教育です。この教育には、学校と家庭・地域の連携が欠かせません。
この機会に、ネットの使い方や情報社会のリスクについて、お子さんと一緒に話し合ってみてはいかがでしょうか。みなさんが情報社会を上手に活用し、より良い未来を築いていけますように。