シリアスゲームとは?効果と分野別の活用事例も紹介します

シリアスゲームとは、社会問題や学習をテーマにしたゲームで、遊びながら問題解決能力や知識を身に付けられるものです。
教育や医療、ビジネスなど幅広い分野で活用されており、実際に効果が実証されているものもあります。
本記事では、シリアスゲームの定義や効果を分かりやすく解説し、具体的な活用事例も紹介します。
ゲームを通じて社会問題に触れ、学びながら解決策を考えるきっかけにしてみませんか?
シリアスゲームとは
初めに、シリアスゲームの定義と「ゲーミフィケーション」との違いを解説します。
シリアスゲームの定義
日本におけるシリアスゲームの普及活動を推進している藤本徹氏は、シリアスゲームは「教育をはじめとする社会の諸問題の問題解決のために利用されるデジタルゲーム」と定義しています。
シリアスゲームは、一般的な娯楽目的のゲームとは異なり、知識の習得や問題解決能力の向上を目的としており、学校の授業や企業研修などで利用されています。
シリアスゲームには、バーチャル環境で現実の社会課題を体験できるシミュレーションゲームや、クイズ形式のゲームがあります。
デジタルゲームだけでなく、カードゲームやボードゲームなど、スタイルはさまざまです。
シリアスゲームには、子どもから大人まで楽しめるものが多く、ゲームの特性を生かして難しいテーマでもプレイヤーの興味を引ける点が最大の魅力です。
海外ではすでにメジャーになっているシリアスゲームですが、日本ではこれからの発展が期待される分野です。
現段階でも、一部の自治体や大学が独自のシリアスゲームを開発しており、徐々に広がりを見せています。
シリアスゲームとゲーミフィケーションの違い
シリアスゲームと似た言葉に「ゲーミフィケーション」があります。ゲーミフィケーションとは、ゲームの要素をほかの分野に適用する手法です。
シリアスゲームが問題解決や学習を目的として設計されたゲームそのものを指すのに対し、ゲーミフィケーションは、ゲーム要素を応用する方法を指します。
具体的に、企業や学校で導入されているポイント制やランキング表、成果を出した人をたたえるバッジ施策などはゲーミフィケーションの一例です。
このように、ゲームの仕組みを活用して行動を促す仕組みをゲーミフィケーションといいます。
シリアスゲームの効果
ここでは、シリアスゲームが持つ4つの効果を紹介します。
学習効果の向上
シリアスゲームは楽しみながら学べるため、プレイヤーの学習意欲を高めます。
また、体験型の学習により学んだことが記憶に残りやすく、主体的な学びが深い理解につながります。
さらに、シミュレーションやロールプレイを活用することで、実際の課題に直結したスキルを習得できる点もシリアスゲームのメリットです。
このように、シリアスゲームは単なる学習ツールにとどまらず、現実世界のスキル習得にも大いに貢献しています。
問題解決能力の向上
シリアスゲームには、プレイヤーの問題解決能力が向上するという効果もあります。ゲーム内でさまざまな課題に取り組むには、情報を整理し、課題を細分化して考える力が必要だからです。
このような思考プロセスを繰り返すことで、現実の問題にも応用できる問題解決能力が身に付きます。
またシリアスゲームでは、プレイヤー自身が選択をしながら進めていくため、自ら考え判断する力が求められます。
自分の選択によってゲームの展開が変わるため、責任を持って意思決定を行う力が養われます。
こうした経験を積むことで、プレイヤーは複雑な状況に直面しても冷静に分析し、適切な判断を下せるようになるでしょう。
チームワークの向上
シリアスゲームは、チームワークの強化にも役立ちます。特にグループでプレイする場合、プレイヤー同士の協力やコミュニケーションが不可欠だからです。
ゲームの進行中にほかのメンバーと意見を交換しながら戦略を立てたり、一緒に問題を解決したりすることで、自然と会話が増え、関係性が深まります。
さらに、ゲームを通じて共通の目標に向かうことで、団結力が強まり、チームの結束力が高まります。
このように、シリアスゲームを学校のグループワークや企業のチームプロジェクトに応用すると、チームが団結することでよりスムーズに問題を解決でき、大きな成果を上げることができるでしょう。
社会問題への関心を高める
シリアスゲームには、難しい社会問題への関心を高めるという効果もあります。プレイヤーは社会問題の当事者としてバーチャル体験することで、問題への関心を深めます。
環境問題や貧困問題といった、普段関心を持ちにくい課題も、ゲームを通じて身近に感じられるようになるでしょう。
社会問題に対する理解が深まると、より積極的に関与しようとする姿勢が生まれるかもしれません。
シリアスゲームの分野別活用事例
ここでは、シリアスゲームの活用事例を分野ごとに紹介します。
医療
シリアスゲームは医療の分野で、医療従事者のトレーニングに利用されています。
例えば、外科手術のシミュレーションゲームでは、実際の手術に近い環境で練習できます。
また、九州大学大学院システム情報科学府では、細菌学や解剖学に関するシリアスゲームを開発し、その効果が実証されました。
さらに、シリアスゲームは、パーキンソン病患者の治療やリハビリテーションにも活用されています。
教育
教育分野では、シリアスゲームが子どもの学習ツールとして活用されています。
例えば、3Dブロックで構成された仮想空間の中で、プレイヤーが自由に建築や冒険をするシリアスゲームでは、数学・科学・歴史といった学習に取り組むことができます。
また、ゲーム世界を冒険しながらさまざまなクエストに挑戦する中で、英語を習得できるシリアスゲームも人気です。
さらに、歴史的な出来事を体験するシミュレーションゲームでは、単なる知識の暗記にとどまらず、出来事の背景やその影響を深く理解できるようになるでしょう。
ビジネス
ビジネス分野では、シリアスゲームが社員教育や研修に活用されています。
仮想の会社を経営するゲームでは、マーケティング戦略や財務管理、経営戦略について学ぶことができます。
また、プレイヤーが組織内で直面しやすい課題に取り組んでいくシリアスゲームもあります。
こちらのゲームの最終目標は、人工知能によって制御されているキャラクターと対話を進めながら、彼の合意を得ることです。
このように、より実践に近い形でリーダーシップを身に付けていくことができるでしょう。
社会問題
シリアスゲームが扱う社会問題はさまざまです。
例えば、環境問題を解決するゲームとして、荒廃した架空の惑星を再生するものがあります。
プレイヤーは、風力発電所や太陽熱発電所を設計・建設し、クリーンエネルギーを創出していきます。
また、貧困問題に関心を持ってもらうために、プレイヤーが低所得者の立場に立ち、限られた予算で生活するゲームも開発されています。
さらに、国連世界食糧計画(WFP)が開発した、食糧援助体験ゲームも注目されています。
こちらは、プレイヤーが食糧危機に直面した島の住民を支援する活動をシミュレーションするものです。
このゲームはプレイヤーの食糧問題への関心を高め、実際に、「大きくなったらWFPで働きたい」という反響もありました。
そのほかの分野
シリアスゲームは、ほかにもさまざまな分野で活用されています。
例えば、地域資源や地域の魅力を活用して、まちの人から寄せられたさまざまな要望に応えていくシリアスゲームがあります。
発想力を使いながら、楽しく地域活性化を目指せるゲームです。
また、難病と闘う子どもを元気づけるためのシリアスゲームも開発されています。
このゲームは、異変細胞を破壊しながら、化学療法の副作用から身を守るアクションゲームです。
さらに、AIを活用して歴史上の武将の戦い方を再現し、歴史的戦闘シーンをシミュレーションするゲームもあります。
このゲームは、歴史家の研究を支援するために開発されました。
まとめ
シリアスゲームは、社会問題への理解を深め、問題解決能力を養う上で有効なツールとして、医療・教育・ビジネスなど、さまざまな場面で導入が進んでいます。
日本では、ゲームを学習ツールとして受け入れる文化が欧米に比べて根付いておらず、抵抗を感じる人も少なくありません。
そのため、シリアスゲームの効果を科学的に検証し、信頼性を高めることが今後の課題となるでしょう。
また、シリアスゲームの開発コストの確保も課題です。
まずはシリアスゲームへの理解と関心を深めることが、普及への第一歩となるでしょう。
この機会に、自分の興味のあるシリアスゲームを探して、楽しみながら学んでみてはいかがでしょうか?