オルタナティブ教育と学校教育の違いは?メリット・デメリットを解説
「子どもの個性や主体性を伸ばしたい」「学校教育の枠にとらわれることなく、教育の選択肢を広げたい」そんな思いをお持ちではありませんか?
近年、日本で注目を集めているオルタナティブ教育は、まさにその願いをかなえてくれる教育スタイルです。
本記事では、オルタナティブ教育の特徴やメリットを、学校教育との違いに焦点を当てて解説します。さらに、デメリットも紹介するので、スクール選びの参考にしてみてください。
オルタナティブ教育とは
オルタナティブ教育とは、フリースクールやホームスクーリングなど、学校教育法に基づかない教育スタイルです。オルタナティブ教育では、子どもの個性や主体性を重視し、スクールごとに独自の教育理念を掲げています。
ここでは、学校教育では成しえないオルタナティブ教育の意義と、その代表的な種類をご紹介します。
オルタナティブ教育と学校教育の違い
オルタナティブ教育と学校教育の最大の違いは、文部科学省が定めている教育方針に則っているかどうかにあります。文部科学省が定めている学校教育法では、以下の8つの教育機関を「一条校」として定めています。
・幼稚園
・小学校
・中学校
・高等学校
・中等教育学校
・特別支援学校
・大学
・高等専門学校
これらの一条校では、文部科学省により、運営制度や目的、学習内容が決められています。一方、オルタナティブ教育を提供するスクールには、独自の理念に基づく教育方針が存在します。
オルタナティブ教育では、学校教育では当たり前に存在する、学習指導要領や教科書がありません。また、教師と児童生徒という上下関係はなく、スクールにいる大人は「スタッフ」として子どもたちをサポートするという違いもあります。
オルタナティブ教育が注目される理由
オルタナティブ教育が注目されている大きな理由の一つに、不登校の子どもの増加が挙げられます。実際、文部科学省の統計によると、2022年度に全国の小・中学校で不登校の児童生徒数は、過去最多の299,048人に達しました。
また、オルタナティブ教育は、文部科学省が2017年に施行した「教育機会確保法」の一環として位置づけられています。この法により、さまざまな理由で学校に通えない子どもたちにも、教育の機会が提供されるようになりました。
さらに、オルタナティブ教育は、子どもの個性や主体性を育む教育スタイルとして注目されています。個々の考えや自ら学ぶ力が重視される現代社会において、こうした教育法は特に重要な意義を持っています。
このように、もはやオルタナティブ教育は「学校に行けないから仕方なく選ぶ」という消去法の選択肢ではありません。子どもたち一人ひとりの個性やニーズに応じた教育スタイルとして、ますます注目されていくことでしょう。
オルタナティブ教育の7つの種類
オルタナティブ教育には、主に次の7種類の教育法があります。
・シュタイナー教育
・モンテッソーリ教育
・イエナプラン教育
・レッジョ・エミリア教育
・ドルトンプラン教育
・サドベリー教育
・フレネ教育
ここで、代表的な3つの教育法をご紹介します。
l シュタイナー教育
ドイツで生まれたシュタイナー教育は、子どもの個性を尊重し、発達段階に応じて、身体・頭・心をバランスよく成長させることを目的とした教育法です。
シュタイナー教育では、一貫教育や、集中して同じ教科を勉強する「エポック教育」を取り入れていることが特徴です。また、芸術や自然に触れる体験を大切にしています。
単に知識を詰め込むのではなく、「自由な自己決定」ができる人間を育てることを目指しているシュタイナー教育は、現代社会において、子どもたちが自分らしく生きるための力を育む教育として注目されています。
l モンテッソーリ教育
モンテッソーリ教育は、イタリアで生まれた教育法で、「子どもは生まれながらにして、自ら学ぶ力(自己教育力)を持っている」という考えに基づいています。
モンテッソーリ教育では、自己教育力を最大限に引き出すために、子どもたちが自ら選び、自由に活動できる環境を用意します。具体的には、異年齢の子どもたちが一緒に学ぶ縦割り保育や、感覚を養うための「教具」を使った遊びなどが特徴的です。
子どもたちの自主性や集中力を育むモンテッソーリ教育は、子どもが自ら学ぶ喜びを体験できる点が大きな魅力です。
l イエナプラン教育
ドイツで生まれ、オランダで発展したイエナプラン教育は、子どもたちが自ら考え、行動する力を育み、同時に他者との共生を学ぶことを目指しています。
「会話」「遊び」「仕事(学習)」「催し」という4つの基本的な活動を通して、子どもたちは、自ら問題を見つけ、解決する力や、仲間と協力して課題に取り組む力を養います。学年をまたいだグループで学習や、教科間の壁を取り払った「総合的な学習」(ワールドオリエンテーション)が特徴的です。
イエナプラン教育は、子どもたちが社会の一員として、自立し、他者と協力しながら生きていくための力を育むことを目指す教育法と言えるでしょう。
オルタナティブ教育の7つのメリット
ここでは、オルタナティブ教育の7つのメリットを紹介します。
子どもの自主性が育つ
オルタナティブ教育のメリットの一つは、子どもの「自主性」が育つことです。スクールでは、生活ルールから学習内容、行事までも、子ども主体で決めていきます。オルタナティブ教育では自主性にとどまらず、自ら考えて行動する「主体性」も養われます。
子どもの個性が尊重され多様性が認められる
オルタナティブ教育の大きなメリットは、子どもの個性が尊重されることです。また、多様性が認められる環境で、人それぞれ個性があることや、互いに尊重し合うことの大切さを学びます。
学びの楽しさを味わえる
学習指導要領がなく教科書もないオルタナティブ教育において、子どもたちは、興味のあるテーマについて、自分のペースで好きな方法で学べます。探求心や好奇心を満たされた子どもは、学びの楽しさを味わい、意欲的に学ぶ力を伸ばしていきます。
少人数クラスできめ細かい指導を受けられる
少人数制を導入しているオルタナティブ教育では、一人一人の個性に合わせてきめ細かいサポートを受けられます。スタッフとの信頼関係も築きやすいでしょう。
異学年交流でコミュニケーション能力が養われる
オルタナティブ教育で見られる縦割り授業では、常に異学年の児童生徒と接するため、コミュニケーション能力を養うことができます。また、協調性やリーダーシップも鍛えられます。
学校に通うことが難しい子どもの受け皿になる
オルタナティブ教育には、学校に通うことや集団に入ることが苦手な子どもの受け皿になるというメリットもあります。少人数指導で対話形式の授業が多いため、講義形式が苦手という発達特性を持った子どもも学ぶことができます。
安心して学べる環境で、子どもは持っている力を発揮しやすいでしょう。
家庭の教育方針に合った学校を選べる
オルタナティブ教育では、スクールごとに教育方針が確立されており、スタッフも同じ意識を持って指導に当たっています。親子が希望する教育方針のスクールを選べば「思っていたのと違う」という事態は起こりにくいと言えるでしょう。
オルタナティブ教育の4つのデメリット
ここでは、オルタナティブ教育のデメリットを4つご紹介します。オルタナティブスクールを選ぶ際には、ぜひ押さえておいてください。
スクール数が少ない
オルタナティブ教育のデメリットの一つに、スクール数の少なさが挙げられます。実際、オルタナティブ教育を提供する学校は全国に約500校と少なく、都市部以外では、通える範囲にスクールがないことも多いでしょう。
出席扱いにならないケースが多い
オルタナティブスクールに通っても、出席扱いにならないケースがほとんどです。多くのスクールが文部科学省の認可を受けていないため、卒業資格を得られないのです。
そのため、オルタナティブスクールに通う場合は、地元の公立学校に籍を置き、欠席扱いとして通う方法が一般的です。しかし、嬉しいことに、「教育機会確保法」の施行により、スクールの出席日数を公立学校の出席とみなす自治体も増えてきました。一度、お住いの自治体に確認してみることをおすすめします。
一方、オルタナティブスクールの中には、文部科学省の認可を受けた一条校も存在します。以下の2校はその例です。
l 学校法人北海道シュタイナー学園いずみの学校(シュタイナー教育)
l 学校法人茂来学園大日向小学校・大日向中学校(イエナプラン教育)
学費が高額になる
オルタナティブスクールは、学費が高額になるというデメリットもあります。認可校が少なく、多くのスクールでは公的な資金援助が受けられないからです。
この場合、学費は原則的に全額負担となります。また、ご自宅の近くにスクールがない場合は、通学にもお金がかかるでしょう。
中学卒業後の上位学校が少ない
多くのオルタナティブスクールが対応しているのは、小中学校までで、高校を併設しているスクールは少ないのが現状です。そのため、高校からは一条校へ通う必要が出てきます。オルタナティブスクールから一条校へのギャップも問題になるでしょう。
オルタナティブ教育を選択する際には、高校以降の進路も考慮に入れておく必要があります。
まとめ
オルタナティブ教育は、子どもの個性や自主性を尊重する新たな教育の選択肢の一つとして、ますます注目されています。多様性を重視する現代社会において、今後さらにその重要性が高まる教育スタイルであると言えるでしょう。
この記事が、オルタナティブ教育についての理解を深め、お子さんに最適な教育の選択肢を考えるきっかけになれば幸いです。