検索する

文科省もサポートするSTEAM教育とは?具体例を分かりやすく紹介

2025年01月17日
文科省もサポートするSTEAM教育とは?具体例を分かりやすく紹介のサムネイル画像
石橋あい
小学校教諭10年以上、児童相談所相談員として勤務経験があり、子どもたちの未来を照らすライターとして教育・福祉分野の執筆を中心に活動しています。
また、公認心理師の資格取得のため通信大学にて心理学の勉強もしています。

【保有資格】
・小学校1種教員免許
・中学校保健体育1種教員免許
・中学校家庭科2種教員免許
・高等学校保健体育教員免許

未来の子どもたちに必要な力を育むため、注目を集めているSTEAM教育。

文部科学省もその重要性を認め、学校現場や家庭での学びを後押ししています。

しかし、「STEAM教育って何?」「子どもたちにどんな影響があるの?」と、感じている方も多いのではないでしょうか?

本記事では、STEAM教育の基本的な考え方から、日常生活で取り入れられる具体例までを分かりやすく解説します。

子どもの未来を支える学びについて、一緒に考えてみませんか?

 

STEAM教育とは?

「STEAM教育」とは、一言でいえば、科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、アート(Art)、数学(Mathematics)の5つの分野を融合しながら、問題解決力や創造性を伸ばす教育のことです。

文部科学省もその重要性を認識し、教育現場や政策で推進しています。ここでは、STEAM教育の基礎知識をお伝えします。

 

  • STEAM教育の目的
  • 文部科学省による推進の背景

 

それでは、見ていきましょう。

 

STEAM教育の目的

STEAM教育の目的は、学問の枠を超えた統合的な学びを通して、創造的思考や問題解決能力を育むことです。具体的な目的は3つあります。

 

    1.批判的思考と創造性の向上

科学、技術、工学、芸術、数学の各分野を組み合わせることで、複雑な問題に対する多角的なアプローチを学べます。そのため、創造的なアイデアや解決策を生み出す力が養われることが期待されています。

また、アートを取り入れることで、固定概念に縛られず新しい発想を生み出す創造性を引き出します。

 

    2.実践的な学びの促進

理論だけでなく、経験を通して学ぶことで得た知識を実社会でどのように活用するかを体験的に積み上げます。

これにより、子どもたちは「なぜ学ぶのか」「学んだことが、どう活用されるのか」を実感できます。

例えば、プログラミングやロボット制作、デザインプロジェクトなどの活動を通じて、問題解決能力や創造力を養います。また、チームで取り組むことで、協力する力やコミュニケーション能力も向上します。

これらのスキルは、現代社会で求められる「実践的な力」として非常に重要です。

 

    3.多様な分野の橋渡し

科学や技術、芸術など、異なる分野が交差する場で学ぶことで、専門分野を超えた発想力が養われ、異なる視点を融合させる力を鍛えられます。

これにより、学びの中で各分野がどのように相互に関係しているのかを理解し、問題解決に役立つ視点を育めるのです。

 

文部科学省による推進の背景

日本では、2016年に内閣府がこれから目指すべき未来社会の姿として「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」を提唱しました。

科学技術の進歩が急速に進む現代社会では、問題解決力や創造性、論理的思考力が求められています。

日本が国際競争力を保つためには、子どもたちがこれらのスキルを身に付け、未来の課題に対応できる力を育てることが重要です。

また、AIやIoTなどの新技術が進化する中、単なる知識の習得にとどまらず、異なる分野を結びつけて新たな価値を創造する力が必要とされています。

このような背景から、文部科学省は学校教育の中でSTEAM教育を積極的に導入し、次世代の人材育成に取り組んでいます。

 

未来の子どもたちに必要なスキル

STEAM教育が目指す「未来の子どもたちに必要なスキル」とは、単に知識を詰め込むことではなく、複雑な問題を解決するための総合的な能力を育てることにあります。

具体的には、以下のようなスキルが求められています。

 

    1. 批判的思考

未来の社会では、情報の真偽を見極め、複雑な課題に対して論理的に考え、問題の本質を

捉える能力が重要です。

STEAM教育では、異なる視点から問題を考察し、最適な解決策を見つける力を養います。

 

2.創造力

テクノロジーや社会が急速に進化する中で、これからは新しいアイデアや革新的な解決策が求められます。

科学や技術だけでなく、芸術が統合されたSTEAM教育は、創造的な問題解決を促進し、柔軟で新しい考え方を育めます。

 

3. 問題解決能力

複雑で多岐にわたる課題に取り組むためには、問題を明確に定義し、効果的な解決策を模索するスキルが不可欠です。

STEAM教育では、プロジェクトベースの学習を通じて、実際の問題を解決する経験を積めます。

 

4.協力・チームワーク

現代の職場では、多くの職業がチームでの協力が必要です。

STEAM教育では、グループでの共同作業を重視し、異なるバックグラウンドやスキルを持つ人々と協力して問題を解決する能力を養います。

 

5. デジタルリテラシー

技術が進化する現代社会では、デジタルツールやプラットフォームを効果的に使いこなす能力が重要です。

STEAM教育では、プログラミングやデータ分析、AIなどの技術に親しみながら、デジタル社会で活躍できるスキルを身に付けられます。

 

6. 適応力

変化の速い現代社会では、新しい状況に柔軟に適応する力が重要です。

STEAM教育は、学びながら失敗し、その経験を試行錯誤に生かすことで、失敗を学びに変える姿勢を育てます。

また、課題解決に向けたプロセスを通じて、困難に対する適応力や挑戦する心を養う教育として注目されています。

 

7. 倫理的思考

テクノロジーの発展に伴い、倫理的な問題が増えてきています。AI、データプライバシー、環境問題など、技術が引き起こす倫理的課題に対して適切に判断できる能力が求められます。

STEAM教育では、技術と社会をつなげる視点を持つことが必須です。

 

学校現場におけるSTEAM教育の具体例

学校現場でのSTEAM教育は、子どもたちの創造力や問題解決力を育むために、各学年に合わせた取り組みが進められています。

小学校では遊びや実験を通じて基礎を学び、中学校では教科横断的な学びや探求活動が行われます。高校ではさらに高度なプログラムが導入され、実社会に直結するプロジェクトや課題解決型学習が展開されることが特徴です。

ここからは、小・中・高校それぞれのSTEAM教育の具体例を分かりやすく紹介します。

 

小学校でのSTEAM教育の実施事例

京都市右京区の光華小学校では、探求学習「ひかりタイム」や教科横断型授業などでSTEAM教育の取り組みが実践されています。

探求学習「ひかりタイム」は、学年ごとのミッションに1年間をかけて挑み、学年の終わりにみんなの前で集大成を発表する、探究型授業です。

ICT・プログラミングのスキルや課題解決の手法だけでなく、リーダーシップや協働性といった非認知能力も伸ばしています。

 

中学校におけるSTEAM教育の実施事例

文化学園大学杉並中学校では、STEAM教育を実践的に取り入れ、生徒が主体的に学ぶ環境を整えています。

内容としては、理科や技術の授業でプログラミングやロボット製作を行う、課題解決型の学習が特徴です。

また、アートの要素を取り入れたデザインプロジェクトでは、作品を通じて創造力や表現力を高める取り組みが行われています。

さらに、探究学習を通じて、科学や数学の知識を活用しながら、社会問題をテーマにした研究を深めています。

 

高校のSTEAM教育プログラム

実際に聖徳学園中学・高等学校では6年間を通してSTEAM教育を推進しており、特にインターネットを「自分が表現したいことのために使われるもの」という教育を行っています。

「自分が得た知識や技能、ツールを統合して、自分が見つけ出した課題や与えられた問題に対して主体的に取り組み、具体的な解決策を創造的に表現できるようにする。それを実践的に体験できる場がSTEAMの授業なのです。」

(聖徳学園中学・高等学校)

このようにインターネットを利用し、プログラミング的思考を取り入れていくことで、「自分の表現の仕方」などを、論理的に考えられるよう工夫されています。

 

地域社会におけるSTEAM教育の推進

地域社会におけるSTEAM教育の推進には、学校だけでなく家庭や地域、企業との連携が欠かせません。

地域との協力を通じて、実社会に根差した学びの場が広がり、子どもたちの理解が深まります。

また、家庭では日常生活の中で簡単な実験や観察を取り入れることで、創造力や探究心を育むことができます。さらに、企業との連携により、先進技術や実践的なプロジェクトを学ぶ機会が提供され、より実践的な教育モデルが実現します。

 

  • 地域との連携と協力の重要性
  • 家庭でのSTEAM教育の進め方
  • 企業との連携による教育モデル

 

それぞれ、詳しく見ていきましょう。

 

地域との連携と協力の重要性

STEAM教育を効果的に推進するためには、地域との連携と協力が欠かせません。

地域社会は子どもたちにとって生活や学びの基盤となる場であり、地元企業や団体、大学などが協力することで、より実践的で多様な学びの機会が生まれます。

例えば、地域企業が提供する職場見学やワークショップは、子どもたちに実社会での知識の応用を体感させる場となります。

また、自治体や地域コミュニティと連携し、地域特有の課題を解決するプロジェクト型学習を行うことで、子どもたちの主体性や問題解決能力を育むことができます。

地域全体が教育に関わることで、子どもたちにとって豊かな学びの場をつくり出すことができるのです。

 

家庭でのSTEAM教育の進め方

家庭でのSTEAM教育は、子どもが日常生活の中で「考える力」を自然に育む絶好の機会です。

例えば、科学や技術に興味を持たせるために、簡単な実験キットを使った遊びを取り入れるのも効果的です。また、料理を通じて計量や温度管理など、数学や科学的な視点を学ぶこともできます。

アートの要素を含む工作や絵画を一緒に楽しむことで、創造性を刺激するのもおすすめです。

さらに、プログラミング教材やロボットキットを使えば、技術や工学への理解が深まります。

重要なのは、子どもの興味を引き出しながら、学びを楽しい体験にすることです。

家族やコミュニティ単位で一緒に学び、話し合うことで、STEAM教育の理念である「問いを持ち、解決する力」を育むことができます。

 

企業との連携による教育モデル

文科省が提唱しているSTEAM教育は、「学校だけで教師だけが一方的に教えるような教育活動が転換され、多様な選択肢の中で、自分自身の答えを生徒が自ら見いだすことができるような学習が中心となる場へとなっていく」ことを目指しています。

生徒一人ひとりの興味や関心に沿って、学校だけにとどまらず、地域社会、企業、NPO、高等教育機関といった多様な学びの場を活用し、異なる年齢や背景を持つ相手とコミュニケーションしながら「社会に開かれた教育課程」による学びを進めていくためのサポートが必要です。

こうした中で、より多くの優れたSTEAM人材の育成、将来、世界をけん引する研究者の輩出とともに、幅広い分野で新しい価値を提供できる数多くの人材の輩出につなげていくことを重視しています。

 

まとめ

STEAM教育は、5分野を統合し、子どもたちの問題解決力や創造力を育む教育です。

文部科学省もその重要性を認め、学校や家庭、地域社会と連携しながら推進しています。

学校現場では、小学校から高校まで学年に応じた実施事例があり、地域社会では家庭での取り組みや企業との連携モデルも進んでいます。

STEAM教育は、未来の社会で必要なスキルを育むため、今後ますます重要視される教育アプローチです。


関連記事