暗号資産(仮想通貨)の税金に関して徹底解説!いつから税率が20%になる?

2025年9月下旬時点の日本では、暗号資産(仮想通貨)の売買・マイニング・ステーキングなどで得た所得は原則として「雑所得」に区分され、所得税法に基づいて確定申告・納税しなければいけません。暗号資産による所得は、総合課税の対象であり、所得が大きくなるほど納める税金も増えます。
ただし、最近、業界団体や金融庁が「分離課税(一律税率20%)への移行」を要望・主張しているため、近い将来、税制改正が実施されるかもしれません。
本記事では、暗号資産で得た所得に課される税金について詳しく解説します。「いつから税率が20%になるのだろうか」と気になっている方は、ぜひ参考にしてください。
2025年9月下旬時点の日本で暗号資産(仮想通貨)による所得を得たら、どのくらいの税金がかかる?
まずは、2025年9月下旬時点の日本における暗号資産税制に関して正確に把握しておきましょう。
暗号資産による所得は、原則として「雑所得」に区分される
暗号資産の売買などによって得た所得は、原則として「雑所得」に区分されます(暗号資産の取引を「事業」として実施している場合は「事業所得」に区分)。
なお、国内のFX業者でFX取引して損失が出た場合は、確定申告することで損失を3年間繰り越せます。しかし、暗号資産の取引で出た損失に関しては、翌年以降に繰り越せません。
総合課税であり、ほかの所得と合算して税率が決まる
暗号資産によって得た所得は、総合課税の対象です。総合課税とは、合計所得金額(雑所得・給与所得などの合計額)に税率(所得金額に応じて変動)をかけて税額を算出する方式です。
他方、株式などで得た譲渡所得に関しては、分離課税の対象とされます。分離課税とは、ほかの所得と合算せずに、一律20%の税率をかけて税金を計算する方式です。なお、この税率は、所得税15%と住民税5%を合計した数値であり、別途、復興特別所得税(所得税額の2.1%)もかかることにご留意ください。
累進課税であり、所得が増えるほど、税金も増大する
暗号資産で得た所得は、総合課税の対象であり、累進課税が適用されます。累進課税とは、所得が大きくなるほど税率も大きくなる仕組みです。
最大税率は55%です(課税される所得金額が4,000万円以上の場合)。なお、所得税45%と住民税10%を合計した数値であり、別途、復興特別所得税(所得税額の2.1%)もかかることにご留意ください。
諸外国の暗号資産税制
海外の暗号資産税制は、日本とは大きく異なります。下表に、主要国(アメリカ・イギリス・ドイツ・フランス)の暗号資産税制をまとめました。
国 |
暗号資産税制の概要 |
アメリカ |
● 保有期間が1年以上の場合は最大20%の税率 ● 保有期間が1年未満の場合は通常の累進課税 |
イギリス |
● 20%の固定税率(納税者区分による) |
ドイツ |
● 年間利益が600ユーロ以下の場合は非課税 ● 1年以上保有している場合は原則非課税 |
フランス |
● 30%の固定税率と累進税率を選択可能 ● 年間利益が305ユーロ以下の場合は非課税 |
上表の内容は、2024年12月に参議院予算委員会調査室が公表した「暗号資産取引に係る所得税制の現状と動向」に基づくものです。詳細および最新の情報は、それぞれの国の金融・税務当局の公式サイトでご確認ください。
日本において暗号資産による所得に対して「分離課税」を望む声が増えている
株式・ETF・投資信託で得た所得は、申告分離課税の対象となり、税率が一律20%です。何億円・何十億円の所得を得ても、税率は変わりません。しかし、2025年9月下旬時点の日本では、暗号資産で得た所得は、総合課税の対象とされ、所得が増えるほど税率が上昇します。
他方、諸外国では、暗号資産で得た所得に関して、一定税率だったり、条件を満たせば非課税になったりするケースもあるため、日本の暗号資産税制の改正を求める声が大きくなってきました。
2025年7月には、暗号資産の業界団体である日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)および日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)が連名で「2026年度 税制改正に関する要望書」を政府に提出し、暗号資産の所得に対して分離課税(および一律税率20%)への移行を要望しました。また、与党内でも、暗号資産課税の見直しに関する議論・動きが見受けられます。
金融庁が暗号資産税制を見直して分離課税にすることを要望
金融庁は「令和8年度税制改正要望事項」において、暗号資産取引で得た所得に関して、以下のように要望しました。
暗号資産取引を他の多くの金融商品と同様の分離課税とすることで、暗号資産を含めた多様な金融商品に投資しやすい環境を整備し、国民の安定的な資産形成を支援する。 |
「他の多くの金融商品と同様の」という文言が記載されており、将来的に分離課税に移行する際は、株式・ETF・投資信託と同様に税率が一律20%とされる可能性があります。この要望は、民間団体ではなく、行政機関(金融庁)が出したものなので、今後、税制改正に向けて動きが加速することが期待されます。
いつから暗号資産で得た所得に対する税率が20%になる?
2025年9月下旬時点では、民間団体や行政機関からの要望が出ているものの、日本政府は税制改正に着手していません。しかし、アメリカではすでに暗号資産ETF(ビットコインETFやイーサリアムETF)が承認され、売買が開始されており、近い将来、日本でも承認されることが予想されます。
税制が変わらないまま、日本でも暗号資産ETFが承認されると、「ETFの売買では一律20%の税率で、現物の売買では累進課税」という事態になり、公平ではありません。そのため、暗号資産ETFが日本国内でも売買できるようになる前に、現物の暗号資産に関しても、分離課税が適用され、税率が一律20%とされる可能性があります。
ただし、暗号資産の取引形態には、DEXやDeFiなど、取引所を介さないものもあります。日本暗号資産ビジネス協会が2025年8月に主催したイベント「WebX2025」では、それらの取り扱いをどのようにするべきなのかに関して、業界関係者によって議論が交わされ、「スマートコントラクトで透明性を確保することで、分離課税の適用を受けられるようにする」という案が出されました。
現状では改正案の内容が確定しているわけではなく、いつ税制改正が実現するのかは定かではありません。各種メディアの報道や暗号資産交換業者・行政機関(金融庁など)の公式サイトを定期的に閲覧し、最新情報をこまめにチェックしましょう。
まとめ
現在の日本では、暗号資産によって得た所得は、原則として雑所得に区分され、総合課税が適用されます。累進課税であり、売買で大きな利益が出た場合、税金の額も多くなる仕組みです。
しかし、諸外国では一定税率だったり、非課税だったりするケースも見受けられます。また、近い将来、暗号資産ETFが日本でも承認されることが予想されるため、ETFと現物の公平性という観点からも、暗号資産への分離課税(および20%の一律税率)の適用が期待されています。
2025年9月下旬時点では、いつから暗号資産の所得にかかる税金が20%になるのかは不明ですが、民間団体や金融庁が税制改正(分離課税への移行)を要望しているため、動向を注視しましょう。