ビットコイン準備金とは?海外および日本における動向を紹介!

世界各国の中央政府や地方政府が、「ビットコイン準備金」の導入に向けて法整備を進めています。通常の準備金制度では、外貨や金(ゴールド)を保有資産としますが、ビットコイン準備金では、ビットコインを保有資産とします。
2025年6月時点の日本では、ビットコイン準備金に関して活発な議論が交わされているとは言い難い状況です。しかし、現在、さまざまな国でビットコイン準備金に関連した法整備が進められているため、近い将来、日本国内で議論が活性化するかもしれません。
本記事では、ビットコイン準備金がどのような制度・仕組みなのかを徹底解説します。特徴や海外・日本における動向を紹介するので、ぜひ参考にしてください。
ビットコイン準備金とは
ビットコイン準備金(Bitcoin Reserve)とは、中央政府や地方政府が「準備金」としてビットコインを保有する制度・仕組みです。準備金とは、国・自治体が経済危機や突発的な支出に備える目的で保有する資産を意味します。
従来、世界各国の中央政府や州などの地方政府は、準備金として米ドルなどの外貨や金(ゴールド)を保有してきましたが、最近、ビットコインも準備金として保有する動きが広まりつつあります。
ビットコイン準備金の特徴
以下、ビットコイン準備金の特徴を紹介します。
分散型資産であり、発行者・中央管理者が存在しない
法定通貨(米ドル・ユーロ・日本円など)の場合、FRB・ECB・日本銀行といった中央銀行(発行者・中央管理者)が存在します。
それに対し、ビットコインは、ブロックチェーン上で分散管理される資産であり、発行者・中央管理者が存在しません。そのため、特定の国家(例えば、アメリカ)や超国家組織(例えば、EU)の影響・政治的圧力を受けずに済みます。また、24時間365日、ブロックチェーン上で取引が可能です。
希少性・インフレ耐性がある
ビットコインの総発行量は2,100万BTCと決まっており、時間が経過するにつれて、新規発行量が減少していくことが特徴です。埋蔵量が決まっている「金(ゴールド)」と同様に希少性があることから、ビットコインは「デジタルゴールド」と表現される場合があります。
法定通貨(米ドル・ユーロ・日本円など)の場合、総発行量が決められていません。しばしば、中央銀行が供給量を増やすことがあるため、法定通貨の価値は次第に減少し、長期的にはインフレが進みます。しかし、発行総量の上限があるビットコインにはインフレ耐性があり、次第に1BTCの価値が上昇していく傾向が見受けられます。
ボラティリティが高い(価格変動が激しい)
ビットコインは、法定通貨に比べてボラティリティが高い(価格変動が激しい)傾向があります。さまざまな出来事に影響を受けて、価値が急騰したり急落したりすることがあり、会計上の評価・監査も容易ではありません。
そのため、準備金としてビットコインを大量に保有することに対して懸念が示されています。「準備金の○%以内にする」など、ビットコインの割合に制限をかけて、価格変動の影響を低減することが求められます。
アメリカにおけるビットコイン準備金に関する動向
最近、アメリカ国内で、ビットコイン準備金の導入に向けた動きが加速しています。以下、連邦政府および各州政府の動きを紹介します。
ビットコイン準備金に関する連邦政府の動向
2025年3月に、トランプ大統領が「戦略的ビットコイン準備金(Strategic Bitcoin Reserve)」を創設する大統領令に署名しました。戦略的ビットコイン準備金は、刑事または民事の司法手続きで没収されたビットコインによって蓄積され、財務省(USDT)が所有し、売却されることはなく、準備資産として維持・保管されます。
現状では、没収されたビットコインなどの暗号資産は、さまざまな連邦機関がバラバラに管理している状態です。戦略的ビットコイン準備金という仕組みによって、これらのビットコインの管理が一元化されることが期待されています。
ビットコイン準備金に関する各州政府の動向
2025年6月上旬時点では、約20州の議会で「戦略的ビットコイン準備金」法案が提出され、審議が開始されています。大きな動きがあったのは、ニューハンプシャー州・アリゾナ州・オクラホマ州・テキサス州の4州です。下表に、4州の動向をまとめました。
州 |
ビットコイン準備金に関する動向 |
ニューハンプシャー州 |
ビットコイン準備金に関する法案が州議会で可決(州の公的資金の5%以内で購入・保有を容認)。 |
アリゾナ州 |
「州が管理する放棄された暗号資産を準備金口座に移管する」という内容の法案が可決。 |
オクラホマ州 |
「Strategic Bitcoin Reserve Act」が下院を通過。 |
テキサス州 |
「テキサス戦略的ビットコイン準備金」設立を認める内容の法案が可決。 |
議会が可決しても、州知事が拒否権を行使するケースがあり、状況は流動的です。詳細および最新の情報は、各州政府・議会の公式サイトなどでご確認ください。
アメリカ以外の諸外国におけるビットコイン準備金に関する動向
アメリカ以外の諸外国でも、ビットコイン準備金に関連した法整備が進められています。以下、代表例として、エルサルバドルおよびパキスタンにおけるビットコイン準備金の動向を紹介します。
エルサルバドルにおけるビットコイン準備金に関する動向
エルサルバドルは、2021年に世界で初めてビットコインを法定通貨化しました。
その後、IMFとの合意により、民間企業がビットコイン決済に応じる義務は撤廃されましたが、引き続き大量のビットコインを政府が保有し続けています。
パキスタンにおけるビットコイン準備金に関する動向
パキスタンでは「暗号資産評議会」が設立され、ビットコイン準備金制度の実施に向けて準備が進められています。
暗号資産評議会のビラル・ビン・サキブ氏は、政府主導でビットコイン準備金を設ける計画を発表しましたが、保有量や取得方法など、詳細に関しては現時点では明らかにされていません。
日本におけるビットコイン準備金に関する動向
2025年6月時点では、日本においてビットコイン準備金に関する議論はほとんどなく、政府が導入に向けて検討している様子も見られません。日本政府は2024年12月に、浜田聡参議院議員が提出した質問主意書に対する答弁書で、以下のように回答しました。
「米国等が進めているビットコイン準備金導入の動き」については、他国における議論の途中の段階にあり、その詳細を把握しておらず、政府として見解をお示しすることは困難 |
この答弁を見る限り、現時点で導入に向けて制度設計が開始される可能性は低いでしょう。ただし、近い将来、アメリカなどの動向を受けて、日本国内でも議論が活性化するかもしれません。気になる方は、財務省などの公式Webサイトを閲覧し、動向をこまめにチェックしてください。
まとめ
ビットコイン準備金とは、政府が準備金としてビットコインを保有する制度・仕組みです。アメリカなど、海外では導入に向けた動きが加速しています。世界各国でビットコイン準備金制度が実施されるようになれば、ビットコイン価格が上昇するかもしれません。
現時点では、日本国内では目立った動きはありません。ただし、諸外国の動向によっては、近い将来、日本国内で議論が活性化する可能性があるので、関係機関(財務省など)の動向を注視しましょう。