暗号資産の税金シリーズ 第2回

暗号資産の確定申告(損益計算)

寄稿者様ご紹介

柴田 洋 氏

国際公認会計士

監査法人トーマツへ入社後、デトロイト・トゥシュ会計事務所 ボストンOFFICEとデトロイトOFFICEでの勤務を経て、柴田公認会計士事業所を開設し、所長就任。
現在は、柴田国際公認会計士事務所 所長、株式会社ベンチャーコンサルティング 代表取締役を務め、活躍中。

暗号資産の確定申告が必要なケース

前回 ご説明したように 暗号資産を売却したり 別の暗号資産と交換した場合には損益を計算して 確定申告の準備をします。利益(所得)が20万円を超えると確定申告が必要になります。以下 個人の場合の税金計算の流れを説明します。

税金の計算は 売却金額から売却原価をマイナスしてさらに必要経費をマイナスして利益(所得)を計算します。所得に税率を掛けて 税金を計算します。

利益(所得)は、1月から12月までの1年間で計算します。計算した税金は、翌年3月15日までに確定申告して納税します。

売却金額A ― 売却原価B ― 必要経費C = 所得D(利益または損失)となります。

売却金額 Aの計算

売却金額は、売却した日付の時価で 計上するので、通常は受取金額(収入)と合致します。
手数料を引かれて入金した場合は、入金した額を売却金額としてもOKです。

売却原価 Bの計算

売却原価の計算方法は、総平均法移動平均法の2種類があります。(所得税法48の2)

(1)総平均法は、1年間の購入金額を購入数量で割って、購入@を計算して、購入@×売却数量が売却原価になります。例えば、ビットコインの場合、1年間で2ビットコインを400万円で買って、さらに1ビットコインを170万円で買った場合の、1年間の平均単価は、570万円÷3ビットコインで計算すると1ビットコイン190万円となります。この年に、2ビットコイン売った場合の売却原価の計算は、190万円×2=380万円となります。

 年の途中 何月に売っても 1年間の平均単価1ビットコイン190万円の計算で 売却原価を計算します。仮に 2ビットコインが420万円で売れていた場合は、420万円―380万円=40万円が 利益になります。

 総平均法は、計算が簡単なので、初心者の人は 総平均法で十分だと思います。  (購入の際に 手数料を払っている場合は、購入金額に手数料を含めて計算します。)

(2)移動平均法は、売却の都度 売却原価を計算します。例えば、先ほどの事例で、2ビットコインを400万円で買った後に、1ビットコインを売却した場合の売却原価は400万円÷2ビットコイン=200万円が1ビットコイン当たりの売却原価となります。  さらに、1ビットコインを170万円で買ったあとに1ビットコイン売却した場合の売却原価の計算は、[(400万円―200万円)+170万円]÷2=185万円が、2回目の売却原価となります。結局1年間で2ビットコインの売却原価は、200+185=385万円となります。仮に 2ビットコインが420万円で売れていた場合は、420万円―385万円=35万円が 利益になります。

移動平均法は、計算が複雑になりますが、売却の都度 利益を計算したい人や 大量に売買を行う人は、移動平均法も活用できると思います。

(3)総平均法と移動平均法の どちらが有利か
先ほどの計算例では、総平均法の利益が40万円 移動平均法の利益が35万円になり、移動平均法のほうが 利益が少ない結果になりました。しかし、年度末に保有するビットコインの原価(在庫)は 総平均法が1ビットコイン当たり190万円、移動平均法が185万円となり、次の年度の計算では、総平均法の方が5万円 利益を圧縮できるため、2年間で考えれば、同じ結果になります。

経費 Cの計算

売却金額A ― 売却原価B ― 必要経費C = 所得D(利益または損失)となります。

売却金額Aが300万円以下の場合は、雑所得の計算を行います。
売却金額Aが300万円を超えて、帳簿を作成・保存している場合は、事業所得の計算を行います。(2022年12月22日国税庁)

課税される所得 Gの計算

収入が暗号資産だけの場合は、所得Dから 基礎控除E(48万円)、生命保険料控除などの各種控除Fをマイナスして「課税される所得G」を計算します。

所得D ― 基礎控除E(48万円)― 各種控除F = 課税される所得G

税金 Hの計算

「課税される所得G」に税率を掛けて 税金Hを計算します。

「課税される所得G」× 税率 = 所得税H

税率は、「課税される所得G」が195万円以下なら 5%です。195万円超は、累進課税により税率が上がります。次回のテーマで、ご説明します。

以上

相続税・・・デジタル遺産

留意点・・・

  • スマホ・PCのパスワードが不明で、中身を確認できない。
  • ウォレットのパスワードはさらに複雑で、ウォレットが見つかっても中身を確認できない
  • 他界した時点から10ケ月して 相続税の申告をしたら半分以下に値下がりして、相続税(55%)を払えない
  • 10か月して 故人の暗号資産を発見して 多額の相続税と延滞税を払う不幸になることも。

対策・・・

  • 暗号資産のパスワードは、家族には知らせておく(貸金庫は現実的でない)
  • 遺言を書いて、相続人を決めておく